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11月29日(金)より 全国公開11月29日(金)より全国公開

『HUMAN LOST 人間失格』業界人トーク付き試写会 第2回【 CGアニメ最前線 編】クリエイター陣が明かす、フル3DCGアニメ『HUMAN LOST 人間失格』で描かれる“死なない世界”が出来上がるまで

11月14日、『HUMAN LOST 人間失格』業界向け試写が開催されました。
第2回は アニメジャーナリストの氷川竜介さんをお迎えし上映後にはトークイベントを実施。
その様子をお伝えいたします!

登壇者(敬称略)
MC:氷川竜介(アニメジャーナリスト)
木﨑文智(『HUMAN LOST 人間失格』監督)
富安健一郎(『HUMAN LOST 人間失格』コンセプトアート 株式会社INEI代表)
森弘光(『HUMAN LOST 人間失格』アニメーション制作 株式会社ポリゴン・ピクチュアズ、アニメーションプロデューサー)
橋本太知(『HUMAN LOST 人間失格』企画・プロデュース 株式会社スロウカーブ、クリエイティブ・プロデューサー)

制作過程について
ポリゴン・ピクチュアズでの課題について森は、「初期の脚本とコンセプトアートの中には、正直『すみません、できません』というものもありました。でもそれはCGアニメではよくあること。すり合わせをしてく中で、作品として何を求めていくのかというところに時間をかけました」と経緯を説明。これに対し木﨑監督が「最終的には富安さんの求めているレベルを目指してやっていきました。いかがだったでしょうか?」と富安に感想を求める場面も。 富安は「コンセプトアートには、みんなのクリエイティビティを刺激するという役割がある」とし「こういう表現方法もあるんじゃないかという提案も含めて提出しました」と解説した。 制作過程の時系列について橋本は「最初に冲方さんから“死なない世界”というコンセプトが出て、そこから木﨑監督、富安さんによる “S.H.E.L.L”(=国民の健康を管理し無病長寿を保障する国家機関)のビジュアルアイデアが生まれ、ここにコザキさんのダークヒーロー像が加わる。これが三種の神器となり、開発に入っていたという流れです」とまとめた。
「ほぼ1年という期間をディスカッションに費やした」という森の言葉に、「すごく楽しい時間でした」と笑顔でコメントする富安。橋本は「積み木がどんどん積み上がっていく感じでした」と振り返った。

自由度は高めでも甘えの許されない現場
「今回はある意味“挑戦状“だと思って取り組みました。やる気のあるスタッフ、やってやるぞ!という気合いの入った若手のリーダーが集まった現場でした」と説明した森。
これに対し木﨑監督は、シナリオに時間をかけた分、プリプロ段階で詰められなかった設定もあったとし「ポリゴン・ピクチュアズの優秀なクリエイターさんたちに割と好きにやっていただきました。
おまかせというより”まかせた!“という感じで(笑)」と笑顔でコメント。
さらに「アクションシーンは25分くらいにとのリクエストは、監督としては絶望的な状況。でも、蓋を開けてみたら、想像以上のクオリティのものが出来上がっていました。今回は、ポリゴン・ピクチュアズのクリエイターさんたちに頭があがりません。本当に感謝しています」と頭を下げる場面もあった。

初のフル3DCGへの挑戦について
橋本は木﨑監督の起用理由として「ボディアクションにつきます!」とコメント。「木﨑監督がCGでどのように料理していくのか、見たかった」とし、「CG作品をやっている僕らにとってもフル3DCG作品は初めてなので、何ができてくるのかという不安はありつつも『できるでしょ』という気持ちもありました」と振り返る。これに対し森は「普段なら『これは無理』というのがあるものだけど、今回は『やればできんじゃん!』というのを感じました。集まったスタッフが良かったというのもその理由の一つ。そこに、僕たちでは思いつかないような木﨑監督の演出が加わって、やっぱりすごいなと感じました」と賞賛した。
富安は、『HUMAN LOST 人間失格』に流れる“何か欠落した世界”を、前輪のないバイクや足の数を減らした警察犬のドローンで表現したという。「何かLOSTしているという感覚を作品全体に漂わせる。そういうところから攻めていくというのが根幹にありました」と解説。シナリオの段階では、激しいせめぎあいがあったという橋本の言葉に、富安は「それでも初期の段階での打ち合わせは本当に楽しかったです」と笑顔を見せる。森は「大変だったけど、最終的には絶対にやりたかったものが残って形になりました」と説明。氷川から「プリプロの段階でさまざまなアイデアが飛び出すのをどのように感じていたか」と聞かれた木﨑監督は「これを具体化してフィルムにしなければいけないという気持ちでいっぱいでした」と当時の心境を明かした。

完成した作品の感想と公開に向けて
木﨑監督は「ホッとしているというのが正直なところ。立ち上げから完成まで紆余曲折がありましたが、なんとか乗り越えました。公開規模も大きいし評判も割と良いので、あとはヒットを願うばかりです」とニッコリ。見どころについては「すべて」とし、「フィルムは集団作業の成果だと思っています。どのショットもみんなで頑張ったので、ぜひ周りの皆さんにすすめてください」とアピールした。

富安は「時間はかかったけれど、才能のある皆さんとお仕事ができてとてもうれしかったです。打ち合わせのたびに楽しくなりました。クリエイティブが集まって作ったものだということが、皆さんに伝わればいいなと思います」とコメント。「何か心にひっかかる、魅力ある作品です。何回も劇場に足を運んで、そのひっかかりの正体を確かめてほしいと思います」と呼びかけた。

森は「本当にできるのだろうかと思ったけれど、完成してホッとしました。完成試写後のTwitterでも楽しんでくれた様子が伝わってきました。一番が選べないくらい大変なことばかりでしたが、細かくコミュニケーションをとりながらやってきた甲斐がありました」と満足の表情を浮かべ、「ポリゴン・ピクチュアズのポテンシャルを最大限に出した作品です。すごいメンバーが揃う中で、とてもいい仕事ができたので、たくさんの方に観てほしいです」と強調した。

橋本は「オリジナル作品のいいところは、言い出しっぺが誰であれ、思っていたよりもすごいものになって返ってくるところ。だから、やめられない。今回もまさにそんな感じで、出来上がったものは『すげー!』って思ったし、宮野真守さんや花澤香菜さんらキャストの皆さんも『演じていて面白かった』と言ってくれました。ここまで関わってくれたスタッフはもちろん、今現在、ビジネス面でも頑張ってくれているスタッフもいます。ルーティーンでやるのではなく、こういう試写会も含めて『みんなで打ち上げるぞ!』という気持ちで取り組んでいます」とスタッフの意気込みを代弁。

続けて「冲方さんが描いた世界観、哲学は緻密でガラス細工のよう。ひとつでも外れたら成立しません。作品のすべてを理解してくださいとは言いません。あえて言うなら『考えるな、感じろ!』かな(笑)。なんだかわからないけどすごい、(大庭)葉藏の気持ちがわかる気がする。言語化できないけれど、心に残ることが映画にとってはすごく重要です。それができていたらおもしろいって言ってもらえると思っています」と笑いを誘いつつ、熱い思いを語った。

最後に、MCを務めた氷川が「CGは長らく、冷たい、硬いなどと言われてきたけれど、そのCGで命を描くというのがどういうことなのか。ポリゴン・ピクチュアズの作品にはいつもそんな要素が入っている気がします。そして今回はその集大成だと思います。『生きるってどういうこと?』と考える若い人たちが多いので、そういった方たちにも響くといいなと思っています」と締めくくった。

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