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11月29日(金)より 全国公開11月29日(金)より全国公開

業界人トーク付き試写会 第3回【世界におけるCGアーティストの今と未来 編】『HUMAN LOST 人間失格』は世界に通じる!ポリゴン・ピクチュアズが生み出した日本発の和洋折衷CGアニメ制作裏話

11月22日、『HUMAN LOST 人間失格』業界向け試写が開催されました。
第4回は 「CGWORLD」編集長の沼倉有人をMCにお迎えし上映後にはトークイベントを実施。その様子をお伝えいたします!

登壇者(敬称略)
MC:沼倉有人(「CGWORLD」編集長)
富安健一郎(『HUMAN LOST 人間失格』コンセプトアート 株式会社INEI代表)
塩田周三(『HUMAN LOST 人間失格』アニメーション制作 株式会社ポリゴン・ピクチュアズ代表取締役)
橋本太知(『HUMAN LOST 人間失格』企画・プロデュース 株式会社スロウカーブ 、クリエイティブ・プロデューサー)

■企画スタート時を振り返って
「海外向けに何かやりたいね」という雑談がきっかけで、スロウカーブが眠らせていた太宰治の「人間失格」をSFでリブートするというアイディアを出したのが2015年のことだったそう。スーパーバイザーの本広さんに提案し、現在の企画でスタートしたという。この企画を最初に聞いたときの印象について、富安は「タイトルは知っているけれど、実は読んでいない人が多い作品だと思った」と振り返る。「最初に出てくるビジョンはとても大事なので、ダークヒーローというキーワードをもとに、描き込んでいった」と解説した。
アニメーション制作が決まった経緯について塩田は「あまりよく覚えていない」と笑いを誘いつつ、「最初に話をもらってから、脚本がフィックスするまで少し期間が空いていた。内容を聞いたとき、ちょうど僕自身が「人間失格」を読んでみようと思っていた時期だったので、本当にこんな企画が形にできるのかと、プロデューサーに確認した」ことを明かした。

■CGアニメ制作のこだわりとコンセプトアートの役割
沼倉の「富安さんのビジュアライズがみんなの共有意識を高めるうえで、重要な役割を果たしている。ビジュアル面のリーダーという位置付けだったのでは?」という質問に、「話し合いの中で、だいたいこういう形になるというのは見えていた。それをベースに解像度を上げていくというイメージだった」と制作の経緯を解説した富安。続けて「それまでアニメーション作品にコンセプトアートとして入ることはほとんどなかった。日本の当時のアニメーションはコンセプトアートがなくてもすごい作品が出来上がるシステムができていたので、自分は必要ないのでは?という話をした経験もある」とコメント。さらに、日本のアニメーションの制作スタイルに戸惑いや驚きがあったことも明かしていた。
これについては塩田も同じような経験があるようで「言語の統一や、振る舞い、意識の違いなど2DとCGアニメの制作方法に驚くことが多かった」と説明。「『HUMAN LOST 人間失格』は、背景をできるだけCGでという方針だったが、CGの世界から作画背景を発注するという、ワークフロー的な部分でも、戸惑いがあった」と振り返っていた。
塩田は、CGでアニメを作ることが許容されていない時代からCG屋としてやってきたポリゴン・ピクチュアズが、『シドニアの騎士』『亜人』『GODZILLA』シリーズ、『BLAME!』とアニメ作品を作るようになったことに触れ、「CG屋ならではの作品を試す局面にきている、そう感じたタイミングで『HUMAN LOST 人間失格』を作ることになった」ことを明かす。

ポリゴン・ピクチュアズが加わり、いよいよ本制作が始まったときのコンセプトアーティストとしての役割について富安は「コンセプトアート通りのものは作れないのが当たり前。でも、今回は、コンセプトアートを線画にして、存在できる形にしてくれた」と解説。さらに、富安のディレクションにより作ったジオラマをポリゴン・ピクチュアズに渡し、ライティングや方針を形にして伝えたという。「東京タワーの模型や、レゴで作ったバイクとか。すごく楽しい作業だった」と笑顔で語り、「この世界観を成り立たせるための木﨑監督の動きはすごかった」とコメント。橋本が「木﨑監督はプリプロをやっている1年半の間に、3Dソフトを使えるようになりました」と付け加えると、壇上そして客席からも「おー」という驚きの声が聞こえていた。
「外部の監督との作品作り。社内ではどのような反応だったのか」という質問に、塩田は「ハマるものとハマらないものがあるのは当然。でも、ハマらないものを木﨑監督との関係性の中で埋めていく作業が楽しかったと、若いメンバーが言っていた」ことを明かし、現場がうまく回っていたことに満足の表情を浮かべた。

■アメリカ、フランスでの上映や海外ファンの反応について
ここで、海外での反響についての質問に。沼倉が「日本的な題材をポリゴン流でCGアニメに仕上げているのは、和洋折衷で世界に通じるものができたという印象を受けた」とコメント。フランスで開催された「アヌシー・アニメーション国際映画祭」での観客の反応について橋本は「伝えたいと思っていたことが意外にも伝わっていると感じた」という。「ジャパニーズクレイジーみたいなことがやりたいんだろ?」という感じで理解してくれたという印象を受けたことを明かしていた。
塩田は「僕自身、何回観ても相変わらず“わからない”と思ってしまう映画。でも、この映画がわからない自分がアホなんだと思わせるような気品がある。まるで『ブレードランナー』や『AKIRA』、『攻殻機動隊』シリーズを観たときと同じような感覚になったので、ひょっとしたらひょっとするのではと感じている。この高度なツッコミに外国人がついてこれるのか、とも思ったけれど、意外と僕自身がわかっていないところを理解していたりして、反応はおもしろいし、コメントもすごくいい。SNSなどでも評判がいいことは実感している」と語った。
富安も「この映画を全部理解した!という人はいないと思う」と前置きし、「わからない自分が悪いのかなと思わせるような仕組みになっている」と説明していた。橋本が「考えるな、感じろ。の映画」とコメントすると、登壇者が揃って「その辺も含めて冲方さんの狙いなのかもしれない」と予想する場面もあった。また、橋本は「何より驚いたのは、アメリカで開催された「Anime Expo 2019」でのスクリーニング。宮野(真守)さんが登壇した瞬間に、コンベンションセンターが揺れた。太平洋を越えて、彼の人気を実感した」と当時の驚きを振り返っていた。

■最後の挨拶:作品の見どころやオススメの楽しみ方について
沼倉「企画、そしてアイディアの勝利という作品。3DCGでしか表現できないクライマックスやハイウェイの描写など、新しい表現を堪能してほしい」とコメント。塩田は「外部の監督とのコラボレーションはアニメでは久しぶりのこと。比較的若手のスタッフが中心となって動かしていた。すごいことやりよった!というのが今の率直な感想。木﨑監督の影響を受けて、CGアニメの新たな到達点に来たことを実感した」と満足な表情を浮かべる。富安は「いろいろと考えながら深読みできる作品に仕上がっている。1回と言わず、5回は観てほしい」とアピール。橋本は「観るたびに違う見え方がある作品なので、末長く愛してほしい」と呼びかけ、トークイベントは終了した。

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